男性教員が育休を取るときの管理職・保護者への報告の仕方や仕事の調整方法を解説します。
こんな方におすすめ
- 育休は現実的に無理だな…と半ば諦めている
- 育休を取ることで、担任するクラスや授業に支障が出るのが心配
- 覚悟は決まったが周りへの報告や仕事が回るか不安
教員はクラス担任や教科担任制のために、同僚に仕事を振ることがそもそも難しい職業。
育休に限らずただの有給でさえ取れない方も多いですよね。
今回の記事では、「男性教員がスムーズに育休を取る方法」を徹底検証していきます。
この記事のポイント
・男性教員が育休を取ることに対する職場や保護者のリアルな意見
・育休を取るための報告、仕事の調整方法
・男性教員が育休を取るメリット・デメリット
筆者プロフィール
・現役教員(7年目)
・3歳と2歳の子持ち
・産後1日のみ休暇取得→その後1ヶ月間可能な範囲で定時帰り
実は僕自身は育休取得を断念した身です。
妻や子どものためだけでなく父親としての自分のためにも、今ある「育休を取りたい」という想いを大切にしてほしくて本テーマについて書くことにしました。
ぜひ記事を参考に育休を現実のものにして、周りから祝福・応援される素敵なパパライフを送っていただきたいと願っています。
タップできる目次
男性教員の育休取得率は8%
他の職種と比べたとき、教員という仕事の休みにくさは主に以下のような点です。
- 教科ごとの専門性が高く、授業の代えがきかない
- クラス担任制で最低でも1年間縛られる
- 部活動や課外授業などがあり、就業時間・休日の境目があイマイ
総務省の最新データ地方公務員における働き方改革に係る状況によると、教育委員会の女性職員が99.6%に対し、男性職員の育休取得率は8.1%です。
また育休を取った人のうち、1月以下の割合が31.1%。内訳は以下の通りです。
つまり実際に育休を取る男性職員は女性に比べて圧倒的に少なく、取得期間も1か月以下しか取れない人が3割もいるということ。
またこのデータは教育委員会のものであるため、学校現場で働く教職員の場合はもっと低いことが考えられます。
教員の育休についての意見
今から挙げる意見は、私たちが独自に聞き取り調査を行った結果をもとにしています。
賛否両論ありますが、トラブルを避けるにもまずは教員の育休取得に対する周囲(職場、保護者、生徒)の意見を見てみましょう!
同僚教員からの意見
(取るなとは言えないので)人員配置のために早めに報告してほしい[高校管理職]
代わりに仕事をする人が気持ちよく働けるように配慮してほしい[元小学校教員]
管理職としっかり相談をしたうえで、保護者とのトラブルだけは避けてほしい[高校教員]
どの意見にも共通するのが「早めの報告・相談」と「周りへの配慮」。
育休は権利とは言えど長期に渡って仕事を代わりにお願いするわけですから、真摯な態度で周りの協力を仰ぐ必要がありますね。
保護者からの意見
先生の仕事は「勉強を教えること」。あとは親の仕事なので問題ない
子どもたちが混乱しないように、育休を取ることが分かったら担任を外れておいてほしい
できれば休んでほしくはないが、もし育休を取る場合は子どもたちのケアや引継ぎを完璧にして、教師として十分に役割を果たして(最大限の努力をして)ほしい
男性の育休は子どもの良い見本になると思う
保護者の間では「できれば休まないでほしい」というスタンスが多く見られましたが、それも我が子かわいさです。
我が子の担任以外であればむしろ、子どもたちのロールモデルとして賛成という意見が多かったです。
児童・生徒からの意見
年度途中で先生が代わっても(さみしさもあるが)仕方ないと感じる[中学生]
突然いなくなるのは困るので早めに言ってほしい[小学生]
子どもたちの意見は案外あっさりとしていて割りきった印象を受けました。子どもながらに、先生の私生活に対する配慮が見られます。
職場や保護者へ報告するときのポイント
長期間仕事を抜けるとなると厳しい意見ももちろんあります。しかし、そのほとんどが報告不足や対応の遅さ、仕事の振り方の失敗から来るもの。
いくら権利とはいえ、大きな顔で当然のように振りかざすようであれば、誰も応援したくはなりませんよね。
ここでは上記の意見を踏まえて、トラブルにならない育休の取り方を解説します。
妊娠が分かった時点で早めに報告する
女性は妊娠してすぐつわりなどの体調不良が現れる人も多く、一般的には妊娠発覚時点で報告します。
男性の場合、通常は安定期に入る5か月ごろを目安に報告する人が多いと思われますが、育休取得を目指す場合は安定期を待つよりも早めに報告すべき。
教員の転勤は基本的に年に1回4月に行われるため人員確保が難しい!
特に中学・高校教員の場合教科担任制で授業を行うため、
学校の規模によっては、自分が抜けたら他に授業できる人がいなくなってしまう事態も!
そうならないためにも管理職への報告はできるだけ早めに行い、自分の仕事を任せられる人材を確保してもらうことが必要です。
あらかじめ担任を外れておく
年度途中で担任が長期休暇を取ることは、職場にとっても保護者・生徒にとってもダメージが大きいです。
保護者への意見の中でも、「担任を外れていてほしい」という意見はダントツで多く見られました。
年度の変わり目でうまくタイミングが合えばですが、できるだけ担任を外してもらいましょう。
こちらも人員の関係上なかなか難しいかもしれませんが、管理職との相談をした上で可能そうであればぜひ申し出ることをおすすめします。
早めに仕事量の調整を始める
「仕事をさばける人」ポジションになってしまっている方には特に注意してほしいポイントです。
仕事が任せられる・さばけることは非常に素晴らしいことなのですが、育休取得を希望する場合は足かせになりかねません。
妊娠を意識した時点から、できるだけ自分の持っている仕事を減らしておくことが望ましいです。
とはいえ就業時間中の職務を調整しろと言われても、上司の命令を断るわけにもいきません。
現実的ではありませんよね。
そこで、担当する部活動を変えることを検討してはいかがでしょうか。
現在平日の放課後や土日祝日の部活動の負担が大きい方は、活動や負担が少ない部活動に移動させてもらうことを提案してみてください。
実は就業時間外の活動がメインの部活動自体、そもそも命令することが法律違反……
そのため職務命令ではなく、打診というかたちで顧問を頼まれますよね。
仕事をセーブしてもらうよりずっと承諾が下りやすいはずです。
保護者・生徒へも正しく早く情報を伝える
担任を持っている場合はなおさら、年度途中で抜けてしまうことで迷惑が掛かってしまいます。(良い先生であればあるほど、残念がられるはずです)
そのため報告すべき内容や時期に関しては、注意深く管理職と相談した上で、正確な情報を伝える必要があります。
自分だけで報告内容や時期を決めるのは絶対に避けましょう。
最悪苦情に繋がってしまいますし、責任が取れません。
男性教員が育休を取るメリット・デメリット
ここでは産後すぐから育休を取るという前提で、育休を取るメリットとデメリットをお伝えします。
育休を取るメリット3つ
- 産後の妻の体を休めてあげられる
- 育児のスタートを夫婦で合わせられるため育児に乗り遅れない
- 子どもの成長を間近に感じ、保護者や生徒への思いに変化がある
僕が思う一番のメリットは①の妻の心と体のケアができることです。出産に際して特に問題がなかったとしても、容態がいつ急変するか分かりません。
赤ちゃんのお世話や夜間授乳で体力を消耗したり、産後の女性の体は非常に不安定です。
実際に僕の妻は出産直後に出血多量(2L)で命の危険を伴いました
教員という仕事は、「全体の奉仕者」であり国民全体の利益のために尽くさなければならないとされていますが、妻が命に代えてでも我が子を出産してくれたときくらいは、妻のために尽くしても罰は当たらないはずです。
育休を取るデメリット3つ
- 収入が減ってしまう
- 担任や部活動に制限をかけることで仕事の幅が狭まる
- 僻地に異動させられる場合がある
①について、育休中の教員の給与は最初の6か月間は3分の2、その後の6か月間は2分の1支給です。
③については報復人事というよりは、都市部に比べて仕事の忙しくない田舎の学校に異動させることで本人の負担を減らすという意味合いが強いです。
育休が取れたらやっておくべきこと
育休を取れた場合に、個人的にこの時期ぜひやってほしいことは保険を見直すことです。
子どもが生まれると、必要な保障がグッと大きくなります。
保険の見直しって実は見落としがち。
普段土日も平日も関係なく忙しい教員は、身の回りの手続き関係を後回しにしている方もとっても多いです。
もし今加入している保険が適正でない場合、万が一のことが起きたときに妻や子どもに十分な財産を残せません。
家にいる時間が長く取れる育休の間、赤ちゃんのお昼寝中にでもぜひ夫婦で保険について考えてみてくださいね。
まずは真摯な態度で育休の相談をしよう
職場の上司や保護者はもちろん「休まないでほしい」と言うはずです。しかし万が一何かあったとき、自分のほかに一体誰が子どもや奥様を守れるでしょうか?
前述したように、僕自身は育休を取ることができませんでした。
おそらく今後の人生でも後悔し続けるだろうと感じています。
男性の育休に関して、近年は少しずつ理解が進んできている段階です。ぜひ勇気を出して、まずは管理職に相談してみてください。
その際に大切なのは、あくまでも周囲への感謝を忘れずに誠実・真摯な態度で申し出ること。仕事上迷惑をかけることは事実ですから、その気持ちが相手に伝わる姿勢でいましょうね。
みなさんが無事に育休を取り、後悔のない育児ができることを心から祈っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。